令和3年度(2021年度) 論文題目

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卒業論文(66件)

論文題目 指導教員
順応水準と光刺激の関係性がマウス網膜神経節細胞の光応答に与える影響 石金
快情動と運の知覚がギャンブル課題の継続回数に与える影響
気圧の変化が認知機能及び気分状態に及ぼす影響 岡村
パレイドリア現象の生起についての検討 石金
アメリカンフットボール選手における目標志向性と競技意欲の構造の変化 岡村
アイデンティティの形成および維持における対人評価の歪みとしての差別的意識 大和田
アスペルガー症候群に対する健常者の態度変容について-絵本による読書法の効果- 岡村
自己視点と重要他者視点との理想自己のズレが状態自尊感情に与える影響の検討 大和田
性的指向と性別が与える被害者非難への影響 松嶋
スポーツ審判員の心理的スキルと特性的自己効力感の関連 加藤
大学生と就労者の比較検討における現代の「大人」の定義 高田
Gustave Maureauの病跡 高田
ホラー映画のポスターデザインが印象評価に与える影響 越智
加害者の個人特性がストーカー行動の発現に及ぼす効果 越智
匿名の相手から否定的なリプライを受けたときの不快度とソーシャルスキル、及びコーピング採用パターンとの関連 国里
大学生における成人と子どもに対する共感と養護性の関連について-コミュニケーション課題を用いた検討- 池田
大学生における同性愛者への態度と行動にカミングアウトが及ぼす影響 塚本
主観的位置の報告方法と反復測定の間隔及び回数がラバーハンド錯覚に及ぼす影響 石金
感情表出の制御と感情知能および孤独感の関連の検討 岡村
主観的ウェルビーイングの計算論的モデルの東アジアおける検討 国里
5-8歳児を対象に罪悪感表情と親密生が加害者からの謝罪に対する許しに及ぼす影響 池田
家族機能から見た結婚観に関する研究 吉田
意図しないカンニングに幼児はどのように対応するのか−課題の操作権限の有無と観察者の有無の影響− 池田
発達障害に関する知識と自己受容および他者受容傾向が発達障害者に対するイメージに与える影響 加藤
読みにくいフォントや青色で書かれた文字は記憶に残りやすいか ―文字のフォントと色が記憶に与える影響の検討― 中沢
出生順位と親子関係が嫉妬に及ぼす影響について 吉田
テレビ電話における他者への意識と評価懸念が感情に及ぼす影響について 池田
自己愛傾向と友人関係のあり方がInstagram投稿頻度に及ぼす影響 加藤
日本における連続殺人の手口の一貫性の検討 越智
ユーモアによる不安軽減効果の検討 松嶋
過剰適応がストレス反応に与える影響とソーシャル・サポートとの関連について 吉田
大学生におけるボディーイメージと親からの期待が摂食障害傾向に及ぼす影響 塚本
第三者知覚とネット依存の関係 松嶋
表情と視線がプライミング効果に与える影響 石金
集団同一化と個人特性が攻撃性に及ぼす影響 越智
青年期の友人・親子関係が問題行動に与える影響の検討 松嶋
大学生の無気力と大学のサークル参加との関連について 小杉
「妬み」と「嫉妬」の感情経験の差を探る 小杉
非色聴保有者を対象とした音楽と色彩イメージの関連 石金
物語とキャラクターが幼児の分配行動に与える影響 池田
大学生の対人的志向性とリーダーシップ・スタイルの性差の検討―社会で女性がリーダーとして活躍するために必要なこと― 加藤
睡眠による虚記憶の定着:ファジィ・トレイス理論からの検討 大久保
サバイバーズギルトと文化差 高田
緊急場面における援助行動と傍観者効果について 松嶋
マウス網膜における運動知覚学習の神経基盤 石金
向社会的行動と被援助指向性およびアタッチメントの関連 吉田
音楽によるストレス想起後の気分の改善効果の検討 岡村
フォントの形態と明るさの違いが文字の読みやすさに与える影響について 大久保
些細な親切行動を左右する個人特性および状況特性の検討 大和田
声の再認記憶に及ぼす声の典型性効果 越智
発達障害児・者に対する大学生の態度に過去の接触経験の質や自発性が与える影響 塚本
マウス網膜神経節細胞における運動刺激に対する応答潜時の解析 石金
マスキングによるSIFIへの影響 石金
相槌の有無と会話環境が対人魅力に与える影響 岡村
大学生における自閉スペクトラム症特性と過剰適応との関連 塚本
集団活動時の自己状態に影響を及ぼす要因についての検討 大和田
ラットの強制水泳における無動時間の適応的意義の検討
欲求傾向、ハマった対象、ハマった理由の比較による適応的・不適応的なハマり方の検討 大和田
CMC(Computer-mediated communication)における匿名性がコミュニケーション行動と攻撃性に及ぼす効果 塚本
カメにおける古典的条件づけ学習の獲得の試み
反応の複雑さと強化量が迷信行動の獲得に与える影響
人名呼称における親密度の変容の検討 大和田
大学生における社会不安とインターネット依存との関係に及ぼすADHD特性の媒介効果 塚本
携帯電話の単なる存在効果 大久保
援助者の身体的魅力が被援助者の援助者に対して抱く感情に与える影響 加藤
2種類の公正世界信念が加害者および有前科者への態度に与える影響についての検討 松嶋

修士論文(8件)

顔と名前の記銘に関する研究

指導教員: 岡村

要旨を読む

認められるか検討することを目的として実験を行った。 実験群はランダムに、印象あり簡易エラーレスラーニング法あり群、印象あり簡易エラーレスラーニング法なし群、印象なし簡易エラーレスラーニング法あり群、 印象なし簡易エラーレスラーニング法なし群に振り分けられた。 実験は対面とオンラインで行われた。いずれの場合も研究参加への同意の確認、質問紙への回答および実験はクアルトリクスを使用した。最初に対提示課題が5秒間画面上に提示され、 印象評定ありの場合には、提示された顔刺激について、印象を評定した。印象評定なしの場合には、顔刺激の印象を評定する選択肢は提示されなかった。続けて、 画面上に表示される妨害課題を行った。その後、自由再生課題が提示され、呈示された顔刺激の名字を自由再生で回答欄にキーボードで入力した。回答後、 簡易エラーレスラーニング法ありの場合には、誤答の場合には、正答が表示された。簡易エラーレスラーニング法なしの場合には、正答は表示されなかった。最後に参加者は、 心理的負担感測定質問紙への回答を行った。さらに、一週間後に、参加者は対面とオンラインでクアルトリクスを使用した実験に参加した。参加者は、顔刺激の呈示順序をランダムに 変えた自由再生課題が提示され、提示された顔刺激の名字を自由再生で回答欄にキーボードで入力した。その後、心理的負担感測定質問紙・相貌失認尺度の質問項目が画面上に提示され、 回答を行った。 その結果、印象評定を実施することで、1週間後も顔と名前の記銘を維持できる可能性が示唆された。 簡易エラーレスラーニング法条件における心理的負担感に違いはなかった。また、正答数も違いはなかった。正答数において、本研究では、統計的な有意差は認められなかったが、 実験条件を変えた4群における直後と1週間後の自由再生の正答数を示した図9から、印象評定と簡易エラーレスラーニング法を組み合わせて課題を行うことで、1週間後まで顔と名前に 関する記憶が定着する可能性が示唆される。 心理的負担感において、本研究では、簡易エラーレスラーニング法の使用の有無に差が認められなかった。本研究からは、簡易エラーレスラーニング法は健康な大学生においては、 大きな影響を与えないのではないかということが示唆された。高次脳機能障害者の感じている負担感と健康な大学生の感じている負担感は違う可能性があり、高次脳機能障害者へ簡易 エラーレスラーニング法を実施した際にはBier(2008)と同様の結果が得られる可能性もあるため、今後の検討が必要である。 印象評定を実施することによって、“記憶課題に対する負担感”の項目について差が得られなかった。しかし、本研究においても、顔の記銘をすることに関しては、 印象評定をすることによって困難と感じにくくなることが明らかとなった。 相貌失認尺度について、本実験では、個人の顔の記銘力を測定し、個人差についての検討のみ行ったが、今後顔の記銘力が高い群、低い群に分けて比較し、印象評定の有用性や負担感の違いを 検討することで、個人の能力に合わせたリハビリテーションに生かしていくことができるのではないかと考えられる。 心理的負担感測定質問紙について、質問項目で参加したこの課題と限定することで、実験参加者が参加した課題に対しての負担感を回答することができたのではないかと考えられる。 簡易エラーレスラーニング法の効果について、本研究では、認められなかった。図9では、印象評定あり簡易エラーレスラーニング法あり群のみ平均正答数の変化を示す直線の 傾きの正負が異なる。本研究の実験参加者の人数が少なかったため、差が得られなかった可能性が考えられ、印象評定と簡易エラーレスラーニング法を組み合わせて課題を行うことで、 正答数が上がる可能性が示唆される。


依存欲求の表出抑制と対人関係における関係性の関連

指導教員: 吉田

要旨を読む

しかし、依存したいという欲求があっても、実際に行動に移せない、頼りたくても頼れない、という場合もある。これまでこうした依存欲求表出抑制の要因には、不安や性格特性など、 個人内における要因が挙げられていたが、本研究では、個人間、すなわち対人関係にも依存欲求表出抑制に影響する要因があるのではないかと考えた。そこで本研究では、対人関係における 関係性が依存欲求表出に影響すると考え、関係性として、親密さ、関係機能の2つの概念を用いて、関係性の中の親密さと関係機能が依存欲求および依存欲求表出抑制とどのように 関連するのかを明らかにすることを目的に、質問紙調査を行なった。質問紙調査は、被験者間計画で実施し、「頼りたくて頼れる」相手について回答を求める群と「頼りたくても頼れない」 相手について回答を求める群とに分け、想起する相手のみ異なる質問紙へ回答を求めた。なお、依存欲求および依存欲求表出は竹澤・小玉(2004)の対人依存欲求尺度、親密さは金子(1989) の心理的距離尺度、関係機能は丹野(2008)の改訂版友人関係機能尺度を用いて質問紙を作成した。日本在住の大学生および大学院生の男女を対象として調査を行ない、「頼りたくて頼れる」 相手について回答を求める群では、60名(男性23名、女性37名)、「頼りたくて頼れない」相手について回答を求める群では、40名(男性9名、女性31名)が参加した。 得られたデータでt検定および多母集団同時分析、共分散構造分析を行なった。その結果、「頼りたくて頼れる」群の方が親密さおよび全ての関係機能因子が「頼りたくても頼れない」群より も高いことが明らかとなった。また「頼りたくて頼れる」群においては、依存欲求に親密さが正の影響を与え、依存欲求表出に「相談・自己開示」「学習・自己向上」が正の影響、 「支援性」が負の影響を与えることが確認された。「頼りたくても頼れない」群においては、依存欲求に「娯楽性」「支援性」が正の影響を与え、依存欲求表出に影響を与える親密さおよび 関係機能は見出されなかった。これらの結果から本研究では、親密さの高いこと、及び関係機能が高いことが依存欲求の表出を促し、逆に、これらの数値が低いことが依存欲求の表出を 抑制する可能性が考えられた。また、相互に理解し合った親密な関係性から生じた依存欲求は依存欲求表出を促進し、一方的に相手を何らかの手段のように捉える関係性から生じた依存欲求は 依存欲求表出を抑制されることが示唆された。これらの結果から、依存対象との関係性は、依存欲求表出の抑制に直接影響を与えるわけではないが、関係性は依存欲求に影響を与え、 生じた依存欲求により依存欲求の表出が促進もしくは抑制される、という点で、依存欲求表出抑制に、関係性は間接的に影響を及ぼす可能性が示唆された。しかし、本研究は依存欲求の 表出抑制を直接測定しておらず、表出の少なさをもって、抑制と解釈している点、また被験者間計画での実施のため明確に依存欲求および依存欲求の表出傾向が相手によって異なるかを 比較できたとはいえない点で、課題が残っている。今後これらの課題を考慮し調査を行うことで、より明確に比較を行い、依存欲求表出抑制に個人間要因も影響することを明らかにできると 考えられる。


確率型プロモーションと確実型プロモーションの選好モデル

指導教員: 小杉

要旨を読む

無料になるプロモーションが見られる。Mazer, Shampanier and Ariely (2017)は、このよう な確率によって購買金額が無料になるプロモーションのことを確率型プロモーション (probabilistic promotion)と呼んだ。一方で「確実に購買金額の 1%割引」といった確実に一 定割合の購買金額が値引かれるプロモーションのことを確実型価格プロモーション(sure promotion)と呼んだ。確率型プロモーションは、期待値が等しい確実型価格プロモーションよ りも選択率や売り上げが高くなることが分かっている (Mazer et al., 2017; Lee, Morewedge, Hochman and Ariely, 2019)。 このように、確率型プロモーションに肯定的な研究が存在する中、なぜ確率型プロモーショ ンが確実型プロモよりも好まれるのかについては議論されており、統一的な見解はない。Mazer et al. (2017)は、プロスペクト理論によって、消費者の確率型プロモーションと確実型プロ モーションの選好を説明できる可能性を示したが、視覚的な判断にとどまっており、説明可能 性は低い。そこで本研究は、統計モデリングによって、消費者の確率型プロモーションと確実 型プロモーションの選好メカニズムを解明することを目的とした。本研究は、予備調査で Mazer et al. (2017)の追試とモデル探索を行い、本調査では、予備調査で提案したモデルの検証を 行った。 予備調査、本調査の結果から、Mazer et al. (2017)の結果は再現されなかった。確率型プ ロモーションと確実型プロモーションに対する消費者の選好は、確率を操作したとき U 字型に 推移することが示された。この結果は、参加者の国籍や年齢、プロモーションの対象や金額に 左右されない頑健な結果といえる。また、このU字型の推移は、個人内で起きているものでは なく、いくつかの傾向の合成によって、U字型になる可能性が示された。確率型プロモーショ ンと確実型プロモーションに対する消費者の選好は、クラスタ-分析によって、常に確実型プ ロモを選好するクラスタ、確率型プロモーションから確実型プロモーションに選好が変化する クラスタ、そして、確実型プロモーションから確率型プロモーションに選好が変化するクラス タに分類することが出来た。参加者の人数比は、常に確実型プロモーションを選好するクラスタが 参加者全体の半分程度であり、残りの2つのクラスタに参加者の4分の1ずつ属してい た。 更に、提案モデルでの推定を行った結果、消費者の確率型プロモーションと確実型プロモー ションの選好は、プロスペクト理論によって説明可能である可能性が示された。また、Gonzalez and Woo(1999)の確率加重関数を用いることで、前述した3クラスタの傾向も表現可能であっ た。更に、参加者の確率型プロモーションの選好は、確率型プロモーションへの魅力と確率値 の弁別性によって、解釈できることが示唆された。しかし、提案モデルのデータへのフィッテ ィングは部分的に精度が低く、予測精度の改善が求められる。 本研究の結果から、消費者は確率型プロモーションよりも確実型プロモーションを選好する 傾向があるため、常に確率型プロモーションが好ましいとは言えない。しかし、参加者の傾向 によっては、確実型プロモーションよりも確率型プロモーションを選好する場面があるため、 企業は、参加者の嗜好や属性を考慮して、どちらのプロモーションを提供するか議論する必要 がある。


アレキシサイミアの要因として親の感情表出ときょうだいの有無や構成

指導教員: 吉田

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そこで本研究はアレキシサイミアの要因として、親の感情表出が影響するのかを検討することと、親以外で最も身近なきょうだいの構成や年齢差が影響するのかを検討することの2点を目的として研究を行った。研究方法は、大学生、大学院生161名を対象に質問紙調査を行った。質問紙はアレキシサイミアを測定するために「TAS-20(小牧ら, 2003)」、親の感情表出を測定するために「子どもに対する感情表出(江上, 2007)」(教示文や項目の主語を変更し、幼少期に参加者が体験した両親の態度に置き換えたもの)を使用し、最後にきょうだい構成と年齢差を尋ねた。 その結果、アレキシサイミアの下位因子において性差は認められなかった。これは小牧ら(2003)の健常群での結果と同様であった。 次に親の感情表出がアレキシサイミアの強さに影響するかについて、女性においては「母親のネガティブな感情表出」がアレキシサイミアの「感情の同定困難」と「感情伝達困難」を強め、「母親のポジティブな感情表出」が「感情伝達困難」と「外的志向」を弱めることが確認された。また「父親のネガティブな感情表出」が「感情の同定困難」を強め、「父親のポジティブな感情表」が「外的志向」を弱めることが確認された。男性においては「母親のポジティブな感情表出」が「感情伝達困難」を強め、「母親のネガティブな感情表出」が「感情の同定困難」を強めることが確認された。このことから、親のネガティブな感情表出が多い場合、子どもの感情に対して寄り添うことができず、ネガティブな反応で返すことが多くなり、子どもの感情に適切なラベリングを行うことが少なくなる。それによって、子どもは自身の感情について不適切な学習を行いやすくなり、自分自身の感情を認識することが難しくなると考えた。また、子どもは親に子ども自身の感情を表出した際にネガティブな反応を多く返されることで、感情表出を行いにくくなると考えられる。したがって、親がネガティブな感情表出を行うことで、子どものアレキシサイミアの得点が高くなると考えられる。 また、男女共に母親の感情表出がアレキシサイミアの強さへの影響が多いことから、父親よりも母親の感情表出が子どものアレキシサイミアの強さに影響していることが分かる。これはアレキシサイミアの要因として母子間の情緒的交流を挙げた西園(1991)や小牧・久保(1997)の結果と一致した。父親よりも母親の方が子どもと一緒に過ごす時間が長く、子どもの感情発達のモデルになりやすいことが推測される。したがって、母親は子どもに対してどのような感情表出を行うかを慎重に考える必要があり、その感情表出によって子どもは感情発達を行うと考えられる。 きょうだい構成について、出生位置は有意差が見られなかったが、きょうだいの年齢差は「3歳差以下」よりも「一人っ子」の方がアレキシサイミア全体の得点が高かった。きょうだいにおいて、長子は年下のきょうだいの感情を読み取りながら世話をする必要があり(柴田, 2010)、年下のきょうだいは長子を社会的情緒発達のモデルとすることが多い(Palacios, N. et al., 2016)。このことからきょうだいがいる場合、親以外からも感情発達のモデルを得ることができるため、アレキシサイミアの得点が一人っ子と比較して低くなったと考えられる。一方で、一人っ子は親のみをモデルとすることが多いため、親の子どもとの関わり方が子どもの感情発達に大きく影響すると予測され、これによって一人っ子のアレキシサイミアの得点が高くなったのではないかと考えた。 今回の結果において親の感情表出ときょうだい構成はアレキシサイミアの強さに影響していたことから、アレキシサイミアの要因になり得ることが分かった。


時間知覚における視覚的刺激系列の規則性の影響 -時呈と刺激項目による検討-

指導教員: 中沢

要旨を読む

刺激の呈示順序が規則的に感じられる場合とそうでない場合の知覚時間を比較すること。呈示時呈の規則性が知覚時間に及ぼす影響と刺激項目の規則性が知覚時間に及ぼす影響を比較し、 その影響の違いや大きさを比較すること。また、これらの比較を通じて時間知覚のメカニズムやより適切なモデルについて考察することを目的とした。 呈示刺激は、視覚的呈示刺激として「1」「2」「3」「4」の4つの数字と、注視点として「+」を用いた。参加者は最初に注視点が呈示されてから最後に注視点が消失するまでの一連の 刺激の呈示終了後に知覚時間を回答した。 一連の刺激呈示の刺激間間隔時間と刺激呈示時間の規則性の有無を組み合わせて、刺激間間隔時間と刺激呈示時間ともに規則性あり(以降DI条件)、刺激間間隔時間が規則性なしで 刺激呈示時間のみ規則性あり(以降Dr条件)、刺激間間隔時間と刺激呈示時間ともに規則性なし(以降 rr条件)の3パターンを作成し結果を比較した。その結果、刺激の呈示時呈の規則性の 比較では規則的な方が知覚時間を有意に長く評価した。刺激の提示順序の規則性の比較には有意差は見られなかったが、最も規則的なものが知覚時間を最も短く評価した。よって刺激の 呈示時呈の規則性と、刺激の呈示順序の規則性では、知覚時間に及ぼす影響が全く異なる可能性が示された。刺激の持つ情報ごとに適用される時間知覚のモデルが異なる可能性がある。 さらにそのモデルの中で知覚時間に与える影響に重みづけがなされる、またはその影響に優劣がある可能性も考えられる。時間知覚に及ぼす刺激の要素が複数あり、それぞれ時間知覚に 及ぼす影響が異なるならば、時間知覚のメカニズムを一つのモデルによって説明するよりも、要素ごとに適切なモデルを適用していく必要がある。また、刺激の要素ごとに時間知覚に及ぼす 影響に優劣があるとすれば、刺激の要素ごとに同調モデルや二過程情報処理モデルなどのモデルに適用した後、それぞれに重み付けを行うことで、複雑な時間知覚と呈示刺激の関係をより 正しく表すことができるのではないかと考える。 また本研究の結果より、刺激呈示時間よりも刺激間間隔時間の方が知覚時間の評価により大きな影響を及ぼす可能性が示された。今後の研究で知覚時間に及ぼす効果について 他の刺激の要素とも比較を行うことで、今後の時間知覚の処理に対する詳細な処理モデルの作成に繋がる可能性がある。


新たな心理的柔軟性尺度の開発とセルフ・コンパッションとの関連 -COSMINと心理ネットワークモデルと用いた検討

指導教員: 国里

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Personalized Psychological Flexibility Index(PPFI)(Kashdan et al., 2020)は,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の基礎研究及び臨床実践での 心理的柔軟性の測定を改善することが期待でき,PPFIの日本語版を作成することは国内の研究及び臨床において有用と考えられる。そこで,PPFI日本語版(PPFI-J)の開発を目的として, COSMINに準じてPPFI?本語版の作成,信頼性,妥当性及び再検査信頼性評価を行った。調査は,クラウドソーシングサービスに登録する日本語を母語とする一般成人を調査対象とし, オンライン上で行った(有効回答:554 名,平均年齢:39.0 歳 (標準偏差:10.0))。再検査信頼性は,初回有効回答者の中から無作為に選出して 1ヶ月の間隔を空けて調査を行った (有効回答:140 名,平均年齢:40.6 歳 (標準偏差:10.0))。構造的妥当性について,原版の3因子モデルが適合しなかったことから探索的な検討を行い,構成概念妥当性の評価と総合して, 原版の3因子をグループ因子として保持し一般因子を仮定したbi-factorモデルを適用した。適合度指標及び因子負荷量において十分な値が得られ,PPFI-Jの合計得点との関連が想定される 心理尺度との相関係数は,設定の 18尺度中13について基準に適合した(適合率:72.2%)。クロンバックのα係数の値(0.77)は基準に適合しなかったが,概ね一貫性があると 評価できる結果であり,再検査信頼性は基準に適合した(ICC値:0.72)。検証の結果,PPFI-Jは一定の妥当性及び信頼性が確保されていると判断した。

2.研究2 心理的柔軟性と同じくマインドフルネスに密接に関連するとされるセルフ・コンパッションは,ACTと様々な形で軌を同じくしており, 両者の融合により介入効果の向上が期待されている(Kashdan and Ciarrochi, 2013)。両者の共通基盤と独自性について明らかにすることを目的として, 心理的柔軟性とセルフ・コンパッションの関連を,Gaussian Graphical Model (Epskamp et al., 2018) による心理ネットワーク分析を用いて探索的に検討した。 具体的には,研究1で開発した心理的柔軟性を測定する尺度のPPFI-Jとセルフ・コンパッション尺度日本語版(SCS-J)J)(有光, 2014) の項目及び下位尺度レベルのネットワーク構造について 検討した。調査は,研究1と同様に,一般成人を調査対象としてオインライン上で実施した(有効回答:534 名,平均年齢:41.0 歳 (標準偏差:10.0))。 PPFI-J・SCS-J間の心理ネットワークには,下位尺度(PPFI-J:「回避」(ネガティブな概念),「受容」「管理」(ポジティブな概念),SCS-J:「自分へのやさしさ」 「共通の人間性」「マインドフルネス」(ポジティブな概念),「自己批判」「孤独感」「過剰同一化」(ネガティブな概念))ごとに,属する項目間の正の関係性による纏まりが見られた。 尺度内及び尺度間で,ポジティブな概念の下位尺度間,及びネガティブな概念の下位尺度間での正の関係性,ポジティブな概念とネガティブな概念の下位尺度間での負の関係性が確認され, 両尺度のネットワーク構造上の関係性が明らかとなった。また,中心性指標からは,ネットワーク内で影響の大きい項目が示された。心理ネットワーク構造からは, 両尺度の間に共通基盤を示すような下位尺度間の相互の強い関係性は見られず,両尺度は独自性を持つものと考えられた。また,項目レベル及び下位尺度レベルの関係性の検討より, 両尺度(概念)間で影響が伝播する経路を想定できることが考えられた。臨床において,それぞれの独自性を考慮して,両者の心理ネットワークの関係性を適用することで, 介入技法のさらなる精緻化に貢献できる可能性があると考える。


時間的距離感に対する介入が先延ばしに与える影響

指導教員: 高田

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実験では、抽象的・全体的に解釈されたものは心理的な距離が遠く感じられやすく、具体的・部分的に解釈されたものは心理的な距離が近く感じられやすいという解釈レベル理論に基づき、 時間的距離の遠い事象に対し具体的に記述を行うという介入を行った。この介入を先延ばしをしている時点で行うことにより、締め切りに対する時間的距離感を小さくし、先延ばしとそれに 伴って生じる否定的な感情を低減させることを本研究の目的とした。 まず予備実験では、締め切りに対する時間的距離感と先延ばしとの関連を調べることを目的とした。予備実験の手続きとしては、課題の提示日(以下、計画日)、計画日に回答した課題の 開始予定日 (以下、計画上の開始日)、課題締切日 (以下、締切日)の3時点で参加者に対し質問を行い、それぞれの時点で感じている締め切り日に対する時間的距離感や現在の感情を調べた。 また、計画日に立てた計画上の課題開始日と実際の課題開始日との日数の差を先延ばしとして検討した。その結果、計画上の課題開始日に締め切り日に対して感じている時間的距離感と 先延ばしとの間に関連は見られなかったが、各計画上の開始日に感じると予測される締め切り日に対する時間的距離感よりも、時間的距離感を長く感じる人と短く感じる人がいることが 分かった。また、時間的距離感の感じ方や先延ばしの性質によって先延ばしに対する適切な介入が異なる可能性が示唆された。 予備実験で時間的距離感と先延ばしの間に関連が見られなかった理由として実験手続きによるものが考えられたことから、本実験では予備実験の手続きを修正し、 解釈レベル理論に基づく介入を行いながら、時間的距離感の感じ方と先行研究から明らかになっている先延ばしプロセスによる介入効果の違いを検討した。先延ばしプロセスとは、 先延ばしの前、先延ばしの最中、先延ばしの後に生じる意識によって先延ばしを3つのタイプに分類したものであり、それぞれ性質の違いが先行研究から明らかになっていることから、 今回の研究でも介入効果の違いが生じる可能性があった。予備実験と同様に3時点において参加者に対し質問を行い、計画上の開始日に計画上の開始日の1日後、あるいは締め切り日に対して 5分間具体的に記述をさせる介入を行った。本実験の結果、本研究では介入による時間的距離感・先延ばしへの影響が見られなかったが、先延ばしプロセスのうち先延ばし過程で一貫して 否定的な感情が生じるプロセスである否定的感情プロセスにおいて、締め切り日の過ごし方について想起をさせる介入により、ネガティブ感情が低下していた。しかし、 他のプロセスではそのような傾向は見られなかったことから、先延ばしプロセスによる介入効果の違いが示唆された。 今回の研究では、限界点があった。1つ目は先延ばしプロセスのうち、楽観的感情プロセスに属する参加者が実験途中で大きく減ってしまい、十分に検討することができなかった点である。 この点については、3時点で質問の回答を行うという実験手続きが楽観的感情プロセスの性質に影響した可能性があるため、今後楽観的感情プロセスにも適応可能な実験手続きを用いて 先延ばしへの介入方法を模索することが必要であると考える。2つ目は否定的感情プロセスの介入効果についてである。今回の実験手続きでは介入が否定的感情プロセスの否定的感情を 低下させることに繋がったが、それが否定的感情プロセスのどのような心理的な過程により生じたのか詳細は不明である。そのため、今後の研究ではより詳細に介入による心理過程を検討する 必要がある。最後に3つ目は介入操作による効果が明確ではなかった点である。実験の結果から、今回の実験操作自体が実験参加者の時間的距離感に影響している可能性が考えられた。 そのため、今回の介入操作による効果だけではなく実験操作による効果も含まれていたことで純粋な介入操作による効果が見えにくかったと考える。介入操作を行わない群、 1日後に対する介入を行う群を用いて再検討することで、将来について具体的に考え時間的距離感を小さくするという介入の効果について検討することができるのではないかと考える。


社交不安と解釈バイアスの心理学的ネットワーク

指導教員: 国里

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これらのモデルで共通するのは,社交不安の症状の維持において認知の偏りが生じているという点である。認知の偏りに関する研究では,解釈バイアス(interpretation bias)が注目され, その中でもコストバイアス(cost bias)と予測バイアス(probablity bias)に焦点を当てた研究が盛んに行われている。このコストバイアスと予測バイアスは社交不安の維持に関与しており, Foa(1996)は,特にコストバイアスは社交不安の症状に強く影響し,その低減が社交不安の症状の改善に大きく関与すると指摘している。また,DSM-5における社交不安障害の診断基準の中に, 「その恐怖が公衆の面前で話したり動作したりすることに限定されているといったパフォーマンス限局型場合,特定せよ」という文言が記述されている(APA, 2013)。 他者の注視を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する,著しい恐怖または不安と記述されている。複数の社会的場面に対して著しく恐怖や不安を感じる原因の1つとして刺激般化 (stimulus generalization)が考えられる。刺激般化は,直接強化されることなく,反応がどのようにして起こり始めるかを説明する有用な概念とされている。そのため, 刺激般化のように社会的状況との間の関連性を考慮したアプローチが必要だと考えられる。刺激般化のような各社会的状況との間の関連性を考慮した分析方法として,心理学的ネットワークを 提案する。心理学的ネットワークのアプローチによって,社交不安の維持に影響を及ぼす社会的状況における恐怖感・不安感や回避の症状を特定することも可能である。これらのことから, 社交不安における心理学的ネットワーク有用であると考えられる。本研究では,心理学的ネットワークの分析を行い,各社会的状況における症状の結びつきの強さ,社交不安の症状の維持に 影響を及ぼす社会的状況における社交不安の症状の特定,解釈バイアスであるコストバイアス・予測バイアスの高低群で心理学的ネットワークの比較を探索的に検討するため, 88名の大学生を対象に,調査研究を実施した。参加者はLSAS-J,SCOPの尺度をそれぞれGoogleフォームにて回答を行った。社交不安における恐怖感・不安感のネットワーク, 社交不安における回避のネットワーク,社交不安における恐怖感・不安感のネットワークの比較(コストバイアス高低群),社交不安における恐怖感・不安感のネットワークの比較 (予測バイアス高低群),社交不安における回避のネットワークの比較(コストバイアス高低群),社交不安における回避のネットワークの比較(予測バイアス高低群)について GGMによる推定および中心性指標を算出した。 その結果,それぞれのネットワークによって,各社会的状況における症状の結びつきの強さ,社交不安の症状の維持に影響を及ぼす社会的状況における社交不安の症状は異なっていた。 解釈バイアスであるコストバイアス・予測バイアスの高低群で心理学的ネットワークの比較については,それぞれの解釈バイアスが高い方が低い方と比べ一部の社会的状況間の症状の関連性が 強くなっており,ネットワーク全体に影響を及ぼしうる社会的状況については,高群と低群でそれぞれ異なることが示された。例外として,コストバイアスにおいては,高低群関係なく 一部の社会的状況間の回避の関連性が強くなっていることを示した。本研究の日本人の社交不安における恐怖感・不安感や回避のネットワークの推定により,どの社会的状況が他の 社会的状況に影響を及ぼしているかの特定や解釈バイアスの高低による社交不安のネットワークの変化は社交不安者へのアセスメントにおいて重要な知見である。しかし, ネットワーク内での因果的相互作用についての検討はできなかった点,2つ以上の社会的状況における恐怖感・不安感,回避の相互作用によって生じる現象の特定ができなかった点, サンプルサイズの関係により先行研究とは異なるネットワークの推定方法を用いた限界点を踏まえ,今後の研究では,横断調査だけでなく縦断調査によってネットワーク全体の 因果関係を特定すること,社会的状況における恐怖感・不安感,回避の相互作用の現象を特定すること,サンプルサイズを十分に確保し,先行研究と同様の方法でネットワークを 推定することが必要である。